歯周病と全身との関わり

歯周病とからだの病気

歯周病とはどんな病気

 ひと言でいうと歯と歯茎のまわりを含めた病気です。歯茎(歯肉)の内部は、見えませんが歯の根元にあるセメント質と歯槽骨とを支えている歯根膜線維からできています(図1)。
 むし歯と違って歯の形が壊れていくのではなく、歯の周囲を支えている組織が壊れていく病気です。 日本人の55?64歳代の約50%がこの病気に罹っています。まさに生活習慣病と云われる訳です(図2)。

歯周病の原因は

 細菌プラーク(バイオフィルム菌と歯周病原細菌)
 プラークとは、細菌の塊で1/1000gの中に1億を超える細菌が棲みついています。この細菌の中には善玉の細菌と悪玉の細菌とがあります。

 歯面の唾液成分である糖タンパクが薄い皮膜(ペリクル)を作ります。それをベースとして食べ物のなかからショ糖を使ってグリコカリックスというネバネバした物質が自分の家づくりを始め、屋根を作って家全体を覆い始めます。すると細菌たちには、棲みやすい場所ができたわけですから、悪玉の細菌が家の中へ多量に侵入して、増えていきます。これをバイオフィルムプラークと呼んでいます。この悪玉の細菌は、食べ物(栄養)や水も十分で温度も 37 ℃前後という大変よい環境で、悪玉細菌が産生する毒素で歯茎を腫らし、血や膿を出したり、歯の周りの骨を溶かしたりします。このプラークは、外からの抗生剤や唾液中の抗菌成分の攻撃に対して膜を作って薬が効かないようにしています。

歯周病の進行と分類

 歯周病の分類は、大きく分けて、歯肉炎、歯周炎と咬合性外傷に分けられます。

歯肉炎

炎症が歯と歯茎(歯肉)に限局して生じる病気で、歯と歯茎の境目が赤く腫れたり、出血したりします。プラークによる歯肉炎とその他薬物、ホルモンやス トレスなどによるプラーク以外の歯周炎もあります。この段階では、歯と歯茎 の周りのプラークを歯ブラシで一生懸命除去すれば、健康な状態に戻すことは 可能です。

歯周病

歯茎の腫れや出血だけでなく、歯と歯茎の隙間に沿ってプラークが侵入し歯周ポケットを形成し、プラークがさらに根尖の方へと移動していきます。すると歯を支えている歯根膜線維が破壊され、歯槽骨が溶けて歯の動揺(グラグラする)がみられてきます。場合によっては、急性症状で歯茎に痛みがでたり、慢性的には腫れ、出血、排膿、口臭などがみられてきます。一般的に慢性歯周炎と云う病名で軽度・中等度・重度に分けられています。

咬合性外傷

歯の噛みあわせが、特定の歯にのみ過剰の力が加わると外傷が生じます。歯茎の出血や腫脹がみられませんがX線写真で歯根膜線維の拡がりがみられます(1次性咬合性外傷)。さらに、歯周炎が進行して歯を支えている歯槽骨が少なくなり、咬み合せの負担が大きくなる場合があります。(2次性咬合性外傷)。X線写真で骨の吸収像と歯根膜の拡がりがみられます。とくに歯ぎしり(ブラキシズム)や口呼吸のある人(口で呼吸をするため、歯茎の水分がとられ、歯茎に炎症を起こしやすい)は、歯周組織に負担がかかり、歯周病を悪化させます。

歯周病が及ぼす全身への影響

肥満
肥満そのものは病気ではありませんが、多くの病気のリスク因子になっています。肥満が歯周病をかいして間接的に全身の健康に悪影響を及ぼします。
肺炎
高齢者は特に食事中にむせたりして気官に歯周病菌などが入っておきます。
口の中をきれいに保つことで、誤嚥性肺炎を防ぎます
狭心症・心筋梗塞・脳卒中
喫煙と同様に、全身の血管に動脈硬化が起こりやすい状態になります。
糖尿病
糖尿病が歯周病を悪化させるとともに、歯周病が糖尿病を悪化させる相互作用があります。
歯周病を治療することで、血糖値が改善されたという報告もあります
胎児の低体重・早産
妊娠中はつわりのため歯磨きがしづらく、ホルモンのバランスの変化のため、歯周病にかかりやすい環境です。炎症成分が胎盤に影響し、早産に関連するという報告があります。